瞑想の基本 歩く瞑想

歩く瞑想?

 歩いている人を見て、瞑想しているとは思いませんが、実は瞑想の基本として歩く瞑想というものがあります。実は、歩く瞑想はお釈迦様が悟りを開いたと言われる「ヴィパッサナー瞑想」の基礎的な練習方法であり、日常生活の中でも取り入れやすいものですので、ぜひ実践してみてください。

色々な瞑想方法

 グーグルやアップルなどが瞑想を取り入れているということが話題になり、日本でも瞑想を始める人が少しずつ増えてきました。アメリカでは、ジョン・カバット・ジン博士が「マインドフルネスストレス低減法」を提唱し、「マインドフルネス瞑想」が広がりました。

 伝統的な瞑想方法は「サマタ瞑想」「ヴィパッサナー瞑想」というものがあります。「サマタ瞑想」とは「集中の瞑想」言われており、一つの対象に集中する瞑想方法です。「ヴィパッサナー瞑想」とは「観察の瞑想」と言われており、自分が感じている変化を観察していく瞑想方法です。

 「マインドフルネス瞑想」「サマタ瞑想」については、別の機会でご説明します。「歩く瞑想」は「ヴィパッサナー瞑想」の一つであり基本的な練習方法であります。

ヴィパッサナー瞑想とは

 瞑想は5000年前くらいからあったと言われており、お釈迦さまが2500年前に瞑想をして悟りを開き、弟子たちに伝えていきました。お釈迦さまが広めた瞑想は、ヴィパッサナー瞑想という瞑想方法です。

 バーリ語で「ヴィ」(あるがままに、明確に)、「パッサナー」(見る、観察する)という言葉から生まれました。あるがままに見る、という瞑想方法であり、自分の外に起こっていること、自分がそれによって感じていることなどを、客観的に観察していきます。

ヴィパッサナー瞑想の効果

 観察をすることによって一切の苦がなくなります。苦しみとは、自分の心の反応です。大切な人が亡くなってしまう、仕事で大きなミスをしてしまう、そんなことが起こったとしても起こったことが苦しみであるというわけではありません。起こったことに対して、自分が反応することが苦しみです。

 そして、苦しみの種類は2つあり、過去を後悔することと、未来を不安に思うことです。不思議なことに今ではありません。ヴィパッサナー瞑想では、今自分に起こっている体の変化、そして心の変化を客観的に見ることによってネガティブな反応がしなくなり、苦しみがなくなります。

 と言っても、実感はないと思いますので、早速「歩く瞑想」にチャレンジしてください。

なぜ歩く瞑想が基本なのか

 ヴィパッサナー瞑想で自分を観察する場合、自分の心の変化を観察することを「心随感」、体に起こる変化を感じることを「身随感」といいますが、自分の心に起こっている変化を意図なしに客観的に感じるということは難易度が上がります。

 一方で、手があがる、筋肉が収縮する、心臓の鼓動が大きくなるなどの体に関する変化は客観視しやすいものになります。ですから、まずは「身随感」から始め、だんだんと「心随意案」を行っていきます。歩く瞑想では主に「身随感」ですが、歩いている時に足が痛いと思っているなどの心の変化は起こりますので、体の変化から始めて、心の変化を見ていく練習を行います。

 歩く瞑想で感覚が別れば、座る瞑想なども行っていくとよいでしょう。

歩く瞑想 基礎

①実践する場所

 最初はかなり遅いペースで歩きますので家の中で十分です。足の裏の感覚をより感じるために靴下は脱いで行ってください。

②ゆっくり足踏み

 まずは、歩く速度の半分くらいのペースでゆっくりと足踏みをしていきます。そして、右足が動き出したら「右」、左足が動き出したら「左」と心の中で唱えていきます。ここでは2つの重要な訓練を行っています。右足が動いたということへの「気づき」、右足が動いたということを観察して心の中で言語化する「ラベリング」。

 「気づき」はバーリ語で「サティ」と言います。このサティを連続させていくことで、思考や妄想が止み、自分の真の状態を見ることができます。

 「ラベリング」は言語で行います。感じた感覚を言語にすることで、曖昧であった感覚を明確にすることができます。このラベリングは自分の心を観察する「心随感」を行う際に大変重要になってきます。

③通常の足踏み

 ゆっくりだった足踏みを普通の歩くスピードにあげます。この際にも右足が動く時に「右」、左足が動く時に「左」とラベリングを行っていきます。「右」「左」「右」「左」と心の中で掛け声のようになってしまいますが、大切なことは動き始めたという感覚を認識した後にラベリングを行うということです。

④ゆっくり歩行

 ゆっくりと歩いていきます。そして、ラベリングを細かくします。足が床を離れる感覚と、着地する感覚をラベリングしていきます。足が地面から離れたら「離れた」、足が地面に着いたら「着いた」と心の中で唱えていきます。

 右足が「離れた」「着いた」、次に左足が「離れた」「着いた」と順番に繰り返していきます。慣れてきたら、少しずつスピードをあげていきますが、ここでも、必ず感覚を感じてからラベリングを行うという順番で行ってください。

⑤さらに細かく観察

 先ほどの歩行よりも、もっとゆっくりと一歩一歩、歩いていく中で細かく感覚を確認しながらラベリングを行っていきます。ここでは、ラベリングは自分の言葉で行っていただいてけっこうです。

 ここからは僕の感じる感覚と僕なりのラベリングですので、参考にしていただいてもいいですし、ご自身でもご自由にラベリングしてください。

 両足で立ち、右足を踏み出そうと思ったら、右足の裏にかかる圧が抜けると同時に、左足の裏に圧がかかります。ラベリングの方法としては「(圧が)抜けた」「(圧が)かかった」などかもしれませんが、お任せします。そして、だんだんと左足の裏の圧が、全体からつま先に移動します「つま先」。ラベ右足を前に出そうと思ったら左のふくらはぎが収縮します「ふくらはぎ」。そして体が移動する感覚があります「動いた」。右足が地面に「着いた」、右足に圧が「かかった」、左足が「離れた」、といったように体に感じる感覚に、気づいて、ラベリングを行っていきます。

 たまに、ぐらつきそうになった時は「ぐらついた」、右手で「バランスをとった」などといったラベリングも行っていきます。

⑥外を歩いてみよう

 外を歩く際には、車の通らない安全な場所を歩いて練習します。足踏みの時に行っていた時の「右」「左」というラベリングを行いながら歩いていきます。ここでも、掛け声にならないように気をつけます。そしてラベリングを行うことに集中して歩いてください。

 しかし、歩いていると1分もしないうちに、いろいろな感覚が生まれていくことに気づきます。「風が冷たい」とか、「あの人誰だろう」など、外を歩いている、視覚や聴覚、嗅覚などさまざまな感覚が情報を送ってきます。

 この際には「風が冷たいと思った」、「早く帰ろうかなと思った」など心の中で感じたことをラベリングしてきます。これが「心随感」です。歩くことのラベリングから意識がそれたとしても、もう一度意識を戻していきます。その繰り返しこそが瞑想のトレーニングになります。

さいごに

 歩く瞑想で「身随感」「心随感」のトレーニングを積んでいった後で、次は座って行う瞑想などを行っていきます。瞑想において「心随感」をしっかりと行っていくことで、これまでだったら怒ったり、悲しんだりといった反応をしてしまっていたことに対して、心が反応しなくなったり、いったんは反応しても、それを客観的に見ることで苦しみは軽減するという効果があります。

 毎日、少しずつでもいいので取り組んでください。